中小企業の退職金、どう準備する?
みなさん、こんにちは!マネーフォーキャストです。
今回は「中小企業の退職金準備」について、FPの立場から実務的な視点でお伝えていこうと思います。
中小企業における退職金は、単なる“福利厚生”の枠を超えて、経営リスクの回避策、人材定着の戦略、
事業承継にも直結する重要なテーマです。
にもかかわらず、計画的な準備がされていない企業も少なくありません。
では、どうすれば中小企業でも無理なく退職金を準備できるのでしょうか?
今回はその具体的な方法と、経営とお金を守る戦略的アプローチをFPとしてのアドバイスを交えてご紹介します。
なぜ退職金準備が重要なのか?
中小企業では、大企業のような厚生年金基金や企業年金制度が整っていないことが多く、退職金の原資を
「自社でどう確保するか」が大きな課題になります。
以下のような場面で、退職金の支払いが経営に大きな影響を与えることもあります。
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創業から勤めたベテラン社員が退職する
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経営者自身が事業承継や廃業を迎える
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M&Aで従業員に退職金を支払う必要がある
こうした時に、十分な準備ができていなければ、「退職金を払いたくても払えない」という事態にもなりかねません。
中小企業が使える、退職金準備の4つの選択肢
① 中小企業退職金共済(中退共)
国が運営する制度で、掛金は全額損金算入可能。
毎月の掛金を外部で積み立てていくため、計画的に退職金を準備できるのが魅力です。
手続きも比較的簡単で、従業員の退職金制度のスタートとしてよく使われます。
② 確定拠出年金(iDeCo+/企業型DC)
従業員の老後資金として人気の制度。
中小企業向けには「iDeCo+」という支援制度もあります。
会社の掛金負担で節税メリットを得ながら、従業員の満足度アップにもつながる仕組みです。
③ 生命保険(養老保険・逓増定期など)
役員や経営者の退職金準備として定番。
保険契約で一定期間積み立てを行い、解約金で退職金を支給します。
損金処理しながら資金を外部に貯められるため、税務面でも有利です。
保険種類によっては「一定期間を超えると解約金が一気に増える」などの設計も可能で、
退任タイミングに合わせて計画的に準備できます。
④ 小規模企業共済(個人事業主・経営者向け)
法人ではなく個人事業主や一人会社の社長に向いている制度。
月7万円まで積立可能で、掛金は全額所得控除。
将来の退職・廃業時にまとまった資金を受け取ることができます。
FPとして伝えたい「3つのポイント」
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税務メリットを活かすことが第一
→ 損金算入できる制度を選びましょう。税引前で積み立てができるということは、会社のキャッシュフローにとっても有利です。 -
「退職金規程」を整備しておく
→ 就業規則や退職金規程の整備がされていないと、トラブルや不公平感を生む原因になります。保険の契約とリンクさせる際にも、事前整備が重要となります。 -
出口設計(いつ・誰に・いくら)を明確に
→ 「経営者交代のタイミングで支給」「退職後10年で分割」など、出口から逆算した資金設計が成功のカギです。
退職金は「経営戦略」の一部として考える
退職金は、単なる支出ではありません。
それは企業としての「信用」であり、「人材定着」の武器であり、「事業の出口戦略」でもあります。
中小企業だからこそ、「何もしないリスク」が大きいのです。
退職金の準備には、制度・税務・保険の知識を横断的に持った専門家(FP)のサポートが役立ちます。
制度導入や資金設計に関心がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
それではまた、次回。